43.元気な骨が未来を支える!
~骨粗しょう症の予防~|一般財団法人 京浜保健衛生協会

京浜保健便り

43.元気な骨が未来を支える!
~骨粗しょう症の予防~

保健師便り2021.06.02 3860view

骨粗しょう症、と聞くと女性かつ高齢者特有の病気と思われる方もいるかもしれません。現在の推計患者数(40歳以上)は女性980万人、男性300万人とされ、高齢化に伴い年々増加しています。女性が多いことは事実ですが、男性も注意が必要です。また、骨粗しょう症が問題となってくるのは主に高齢期ではあるものの、若年のうちからの予防・対策がとても重要な病気でもあります。

骨の健康は元気に活動するための基盤となるものです。これを読んでいただいているあなたはもちろんのこと、パートナー、ご両親、お子様…などご家族みんなで骨の健康を考えてみませんか。

〇骨粗しょう症とは

骨粗しょう症は骨の病的な老化により骨が脆くなった状態をいいます。

私たちの体は絶えず骨吸収(破骨細胞が骨を溶かす)と骨形成(骨芽細胞が新しい骨を作る)を繰り返しており、このサイクルは生涯にわたって続きます。このバランスが崩れ、骨の吸収が骨の形成を上回ると、骨は次第に弱くなり骨粗しょう症に至ります。

骨粗しょう症で怖いのは、ケガや転倒、日常生活のわずかな衝撃でも容易に骨折してしまうことにあります。それをきっかけに寝たきりあるいは生活が大幅に制限されてしまうようなことも少なくないのです。

〇骨粗しょう症の原因

では、骨が脆くなってしまう要因は何でしょうか。

まず、年齢的な変化が挙げられます。加齢に伴い、骨形成能と骨に必要なカルシウムの吸収能が徐々に低下していきます。加えて女性の場合、骨吸収を抑える働きをしているエストロゲンという女性ホルモンが閉経期を迎えると急速に減少するため、骨吸収が加速することになります。

カルシウムはそのほとんどが骨に存在しますが、血液中にも一定濃度が保たれ、筋肉や神経などの働きに関与しています。カルシウムの摂取量が不足していると、カルシウムが骨から溶け出して血中に流れてしまうため、骨が脆くなる要因となります。また、カルシウムはビタミン類のサポートがあって腸から吸収されますので、これらがバランスよくとれていないとせっかくのカルシウムも有効利用されません。極端な食事制限を伴うダイエットや加齢による食事量の低下、食事バランスの欠如なども骨が脆くなる要因となります。

その他、運動不足や日照不足、喫煙、過度のアルコール摂取はカルシウムの利用効率を低下させ、糖尿病などの生活習慣病があると骨吸収亢進に作用することがわかっています。

〇骨の構造を知ろう

カルシウムは骨の大事な構成物質ですが、骨の強さを決めるのはこれだけではありません。骨を鉄筋コンクリートの建物に例えてみましょう。カルシウムは建物のコンクリート部分にあたります。鉄筋にあたるのはコラーゲン(タンパク質)です。建物(骨)はコンクリート(カルシウム)の量だけ増やしても頑丈にはなりませんね。中を貫く鉄筋(コラーゲン)がしっかりしていることも大事な条件となります。

骨密度(単位面積当たりの骨量)は高いのに骨折してしまうケースは骨の構造などによる「骨質」が低下していると考えられます。骨の強さは骨量と骨質によって決まるため、カルシウムだけではない対策が必要になります。

〇予防と対策

骨粗しょう症の予防を生涯で考えた場合、まず成長期に骨量を高い水準で十分に獲得することが重要です。骨量は20歳をピークにそれ以降は比較的安定的に推移しますが、女性においては50歳前後での閉経を期に急速に骨量が減少しますので、そのペースを緩徐にする、維持していくことが目標です。

3つのポイントを見ていきましょう。

1、食事で栄養を十分に摂る!

カルシウムを始めとして骨の健康に関わる栄養素は数多くあります。骨の構成要素でもあるタンパク質は肉、魚、卵、大豆および大豆製品から。カルシウムの吸収を助けるビタミン類なども満遍なく摂取できるようバランスの良い食事が理想です。

2.運動で骨に刺激を与える!

運動のポイントは“骨に力が加わる”ということ。骨は長軸方向に力が加わると骨形成が促され強度を増すと言われています。若年の方や体力に自信のある方は、テニスやランニング、ダンス、ジャンプなど踏み込む力が加わるような運動、あるいは筋力トレーニング(特に下半身の運動)などが効果的です。

でも、そこまでの運動をしなくても大丈夫。「立つ」という行為だけでも背骨~足にかけて自分の体重という負荷がかかります。1日30分程度、ウォーキングや日常生活の中で買い物袋や鞄を持って歩く機会を増やす、屋内で踏み台昇降(階段昇り降り)をするなどでもOKです。

無重力となる宇宙空間では骨粗しょう症が一気に進行するそうです。骨にとっていかに荷重が大切かということがよくわかる話ですね。

 

3.日の光を浴びる!

カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、日光にあたることで体内で作りだすこともできます。何かと有害視されがちな紫外線ですが、過度の紫外線対策は骨を脆くする要因に。天気の良い日は15分程度、運動を兼ねて外出したり窓を開けて日の光を浴びるなど、上手にお付き合いができるとよいですね。

参考文献:

・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版:編集 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(日本骨粗鬆症学会 日本骨代謝学会 骨粗鬆症財団)委員長 折茂肇 http://www.josteo.com/ja/index.html

・e‐ヘルスネット[情報提供]:厚生労働省    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/

・いいほね.jp骨粗しょう症啓発サイト:「いいほね」運営事務局 https://iihone.jp/

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この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。

一般財団法人 京浜保健衛生協会

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