31.大人のためのラジオ体操
保健師便り2018.11.03 45333view
日本では誰もが知っていると言えるほどなじみ深いラジオ体操。 子どもたちの夏休みの風物詩ともいえるラジオ体操ですが、正しくやればさまざまな効果が期待できるとして、ここ数年「大人の」ラジオ体操が注目されています。今回は、私たち日本人にとって最も身近な運動、「ラジオ体操」に関するお話です。
ラジオ体操の歴史は古く、初代のラジオ体操は1928年(昭和3年)11月1日に東京中央局から「国民保健体操」として放送が開始されました。軍事主義的とされ終戦後に一時自粛されましたが、誰もが気軽に行える運動としてラジオ体操の復活を望む声が増え、新ラジオ体操の放送が開始、1951年(昭和26年)には現在のラジオ体操第一が放送されるようになりました。ラジオ体操は今年で誕生90年となります。
現在のラジオ体操には第一、第二がありますが、実はそれぞれつくられた目的や対象が異なります。
ラジオ体操は、普段はあまり動かす機会のない約400種類の体の筋肉をまんべんなく動かす全身運動です。かつ、その順番は言うなれば「起承転結」で構成された素晴らしい運動となっています。また、有酸素運動のため、正しい方法で行うことにより代謝がアップし、効率的なエネルギー(kcal)消費も期待することができるのです。つまり、
といった悩みを抱える大人にこそ、オススメしたい運動と言えるのです!また、新たに覚えなくてもなんとなく体が覚えている、特別な道具はいらず身体一つで始められる、朝行うことで神経の働きの活性化と血液循環の改善により、体全体を覚醒させることができるといったメリットもあります。
※メタボ=メタボリックシンドローム
※ロコモ=ロコモティブシンドローム(保健師だよりvol.14参照)
それでは、ラジオ体操で実際にどのような効果が得られるのでしょうか。クイズで考えてみましょう。
Q1.ラジオ体操第一は安静時を1としたとき、約何倍の運動強度でしょう?
①約2倍②約3倍③約4倍
Q2.体重60kgの人がラジオ体操第一(約3分)をした場合、運動によって消費されるエネルギーは約何kcalでしょう?
①約3kcal②約6kcal③約9kcal
Q3.体重60kgの人がラジオ体操第一&第二を、1日1回、毎日行った場合、
3年間で約何kgの体重(脂肪)減少に相当するでしょう?
①約1kg②約2kg③約3kg
答えは、一番最後に!
ラジオ体操で最大限の効果を得るためにもっとも重要なのは、「正しいラジオ体操」をすることです。ひとつひとつの動きに目的があります。いま、どこの筋肉を動かしているかを意識しながら、丁寧に実践しましょう。
※より詳しく知りたい方は、「かんぽ生命」HP「ラジオ体操の動きの解説」をご覧ください。
ラジオ体操第一 | ||
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運動メニュー | 目的 | 意識する体の部位とポイント |
①伸びの運動 | 背筋を十分に伸ばして良い運動姿勢をつくる | 全身 ポイント:背筋、指先までしっかり伸ばす |
②腕を振ってあしをまげのばす運動 | 腕と脚を刺激して、全身の血行を促進する | 体幹、脚の筋肉 ポイント:かかとをおろすのは脚を伸ばし終えた一瞬だけ |
③腕をまわす運動 | 肩関節を柔軟にし、肩こりや首筋の疲れをとる | 肩甲骨まわりの筋肉 ポイント:バケツを振り回すイメージでスピードにメリハリをつける |
④胸をそらす運動 | 胸部を大きく広げて胸の圧迫を取り除き呼吸機能を促進させる | 胸の筋肉 ポイント:視線をまっすぐに胸を開く |
⑤からだを横にまげる運動 | 横曲げで背骨を柔軟にする。わき腹の筋肉を伸ばし消化器官の働きを促す | わき腹の筋肉 ポイント:腕と耳をガイドに真横に伸ばす |
⑥からだを前後にまげる運動 | 腰椎部の柔軟性を高めて腰部の圧迫を除く。腰痛予防 | 腰まわりと背中の筋肉 ポイント:力を抜く |
⑦からだをねじる運動 | 胴体の主要な筋肉を伸ばし、背骨を柔軟にし、腹部の圧迫を除く | 腹斜筋 (ウエストのくびれを作る筋肉) ポイント:腕より先に体を動かす |
⑧腕を上下にのばす運動 | 腕を上下に曲げ伸ばすことで、全身を緊張させ、素早さと力強さを身につける | 背骨のまわりの筋肉 ポイント:最短距離で素早く動かす |
⑨からだを斜め下にまげ、胸をそらす運動 | おしりから脚の後ろ側の筋肉を伸ばし、腰の圧迫を取り除く。あわせて胸部を広げる | ハムストリングス (太もも裏の筋肉) ポイント:背筋を伸ばし股関節から曲げる |
⑩からだをまわす運動 | 腰の周りの筋肉を伸ばし、背骨を柔軟にする。腰の悪いくせや圧迫を取り除く | 腰まわりの筋肉 ポイント:手と手の距離を一定に保つ |
⑪両あしでとぶ運動 | 脚部の筋肉を活発に動かすことで、全身の血行をよくし、からだの緊張をときほぐす | 脚の筋肉 ポイント:上体の力を抜いて跳ぶ |
⑫腕を振ってあしをまげのばす運動 | 腕と脚を刺激して、全身の血行を促進する | 体幹、脚の筋肉 ポイント:②と同じ |
⑬深呼吸 | 呼吸を深くゆっくり行うことで、からだを早く安静時の状態に戻す | 全身 ポイント:ゆっくりと呼吸する |
健やかな未来のために、ラジオ体操を毎日の習慣に取り入れてみませんか?
クイズの答え
Q1 答え ③ 約4倍
ラジオ体操第一は安静時を1としたとき約4倍の運動強度があります。
同じ運動強度の例として、
卓球、パワーヨガ、自転車に乗る(≒16km/時未満、通勤)、階段を上る(ゆっくり)等があります。
ちなみに、ラジオ体操第二は4.5倍の運動強度があります。
(出典:健康づくりのための身体活動基準2013)
Q2 答え ③ 約9kcal
消費エネルギー=1.05×METs×時間(h)×体重(kg) の計算式に当てはめた場合、
同体重60kgの人では、1.05×4.0×0.05×60=12.6(kcal)
運動による消費エネルギーは、そこから安静時の消費エネルギー(1.05×1.0×0.05×60=3.15) を引いた値、12.6-3.15=9.45kcalとなります。
※METsとは…「Metabolic equivalents」の略で、活動・運動を行った時に安静状態の何倍の代謝(カロリー消費)をしているかを表しています。
Q3 答え ③ 約3kg
ラジオ体操第一&第二(約6分)での運動による消費エネルギーは、20.79(kcal)。
それを毎日行ったときの消費エネルギーは、
20.79(kcal)×365(日)×3(年間)=22,765.05 (kcal)
脂肪1kgを燃焼するために必要なエネルギー約7,000kcalで割ると、
22,765.05/7,000=3.25(kg)
この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。