29.CPRとAED ~心肺蘇生法と自動体外式除細動器~|一般財団法人 京浜保健衛生協会

京浜保健便り

29.CPRとAED ~心肺蘇生法と自動体外式除細動器~

保健師便り2018.09.03 25209view

腸内フローラ

質問: 目の前で人が倒れたり、意識のない人を発見したら、どうしますか。

答え: CPR を行い、AED を使います。

CPR(cardio pulmonary resuscitation)とは、心肺蘇生法の総称です。一般的に心臓マッサージと 呼ばれる胸骨圧迫(※図 2 参照)と人工呼吸を行いますが、訓練を受けていない救助者は、人工呼吸はしなくてよいとされています。 胸骨圧迫は、脳への酸素供給を維持するために行います。脳は酸素を蓄える ことができず、呼吸が止まると 5 分前後でダメージを受け、回復が見込めない状態に陥ってしまいます。

心臓が原因とされる突然死の多くは、心室細動という不整脈を起こしている可能性があります。心室細動とは、心臓の筋肉がけいれんをしたようになり、全身に血液を送るポンプ機能を失った状態です。心室細動が起こると、脳や腎臓、肝臓など重要な臓器にも血液が⾏かなくなり、やがて心臓が止まり、死に至ります。そして、この心室細動には、AED が有効なのです。

AED(Automated External Defibrillator)は、電気ショックを与え、心臓の きを元のリズムに戻すため の医療機器です。電気ショックが必要かどうかは AED が自 的に心電図を解析・判断し、それを音声ガイダン スで知らせてくれます。電気ショックが必要ないと判断した場合には、電流が流れることはありません。AED の 使用については、2004年7月1日の厚生労働省の通知により、非医療従事者にも使用することが許可されました。

また、救命の現場に居合わせた一般市⺠が救命のために使用した場合には、医師法上、⺠事上、刑事上、責任 は問われないとされています。したがって、人が目の前に倒れていて、意識がない人を発見したら、周囲の状況 が安全であることを確かめ、倒れた人の反応を確認し、反応がなければ大声で応援を呼び、119 番通報と AEDの手配を依頼します。そして、救急車が到着するまでの間、CPR を絶え間なく行い、AED を 使用します。

● 1分1秒でも早い救命処置を

救急車を要請してから現場に到着する時間は全国平均で8.5分、病院に搬送されるまでに要する時間は、全国平均で39.3分となっています(※1)。 カーラーの救命曲線(図1)によると、心肺停止後約3分間、呼吸停止後約10分間何もしないでいると、50%の確率で助からないとされています。

つまり、1分1秒でも早く手当て(図2)を行うことが救命へのカギとなります。 平成28年中に一般市民が目撃した心臓に原因があるとされる心肺機能停止傷病者数は約25,600人で、そのうち一般市民によってCPRを実施した傷病者数は約14,300人(約56%)となっており、CPRを実施しない場合と比較すると、1カ月後の生存率は2倍近く高くなります。

さらにそのうち、AED(自動体外式除細動器)を実施した場合には、実施しなかった場合と比較すると、1ヵ月後の社会復帰率は4倍以上高くなります(※1)。

※1 総務省消防庁 平成29年12月19日 平成29年版救急・救助の現況より

※図 2 応急手当:一次救命処置の流れ              出典:東京消防庁ホームページより引用 一部加筆

● AEDの設置場所を確認できるマップ

AEDは事業所や公共施設など至るところで⾒かけられるようになり、AEDマップ(※2)が作成されるまでになりました。2020年オリンピックが開催されることもあり、さらに整備されていくことが⾒込まれます。
AEDが設置されている場所を確認しておくことは緊急の際に役⽴ちます。職場やよく利用する公共施設での 設置場所を確認しておくとよいでしょう。

※2 ≪東京都福祉保健局 ⽇本救急医療財団全国 AED マップ≫
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/kyuukyuu/aedmap.html

● 9月9⽇は「救急の⽇」

9月9⽇は「救急の⽇」です。そして、この⽇を含む1週間(9月9⽇〜9月15⽇)は「救急医療週間」と されています。これらは、救急業務及び救急医療に対する国⺠の正しい理解と認識を深め、救急医療関係者の 意識高揚を図ることを目的に昭和57年(1982年)度に定められました。この期間、消防庁をはじめとする 関係機関において各種⾏事が開催されます。

● 救命講習会に参加してみよう

いざ人が倒れている場面に出くわしても、思うように動くことができないかもしれません。でも、救えるのは 貴方だけです。消防庁や関係機関において、救命講習会が開催されています。そこでは、CPRの方法や AED の 使い方を学ぶことができます。ぜひこの機会に参加し、体験してみてはいかがでしょうか。

【各救命講習会のご案内(一例)】(※多少の受講料がかかります)
≪⽇本赤十字社 神奈川県支部≫
http://www.kanagawa.jrc.or.jp/study/sp/course/emergency.php
≪川崎市≫
http://www.city.kawasaki.jp/840/page/0000020443.html
≪東京消防庁≫
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/kyuu-adv/life01-1.htm

保健師便り

この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。

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