22.ヒートショック
保健師便り2018.02.03 5200view
凍えるような寒い日には入浴中の突然死が多発します。
東京都健康長寿医療センター研究所が行った調査では、1年間で全国で約17,000人もの人々がヒートショックに関連した「入浴中の急死」に至ったと推計されました(2011年調べ)。この死亡者数は、交通事故による死亡者数の3倍をはるかに超え、そのうち高齢者は14,000人と大多数を占めています。しかし、ヒートショックは高齢者だけでなく、誰にでも起こり得ます。
暖かくなるまでは油断せず、予防・対策をしっかり行いましょう。
ヒートショックとは、暖かい所から寒い所に移動した際の急激な温度差によって引き起こされる健康被害のことです。
急激な温度変化が原因となり、血圧が一気に上昇、下降したり、脈拍が早くなったりと心臓や全身の血管に異変を引き起こし、心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中・不整脈を起こすリスクを高めます。また、ヒートショックにより、ふらついたり失神すると、滑りやすい浴室で頭を打ち、溺れて死に至ることがあります。
● ヒートショックに注意すべき人の特徴
以下の、身体の生理機能や自律神経機能が低下している方、血管がもろくなっている方、急激な温度変化にさらされやすい方は注意が必要です。
●65歳以上の高齢者の方
●高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や不整脈の持病がある方
●肥満気味やメタボリックシンドロームの方
●脱衣所や浴室に暖房器具のない方
予防のポイント:脱衣所と浴室の温度差をなくす
室内の寒暖差が10℃以上ある場合はヒートショックのリスクが高まると医学的に考えられています。
室温計や湯温計を設置し、確認しながら入浴するとヒートショックを起こすリスクを減らすことができます。
● 防止策
1 脱衣所や浴室を暖める
脱衣所にファンヒーター等の暖房器具を設置し、暖めておきましょう。 浴室の床にマットやスノコなどを置いておくことも有効です。
裸になったとき急激な寒さを感じることもなく、血圧に異変をきたすリスクが下がります。
2 シャワーでお湯をはる
湯船にお湯をためる際、高い位置にシャワーを設置し、そこから給湯すると、蒸気で浴室全体が暖まります。
3 湯船のフタを開けておく
いきなり浴室に入るのではなく、入浴する5分程前から浴槽のフタを開けておくようにしましょう。湯気が上がるので浴室全体が暖かくなり、また、浴槽のお湯の温度もやや下がり、温度差が少なくなります。
入浴する際は手や足などにかけ湯をして体をお湯に慣れさせましょう。
首までお湯に浸かることは心臓に負担をかけるので、胸あたりまでにしましょう。
4 湯温は41℃以下に設定
湯温が42℃以上だと交感神経が高ぶって緊張状態になり、汗をかきやすくなるとともに筋肉が硬くなりヒートショックを起こすリスクが高まります。
41℃以下のぬるめの方が、副交感神経が刺激されて汗もさほどかかず筋肉が緩んでリラックス効果も高くなります。また、身体全体を芯から温め、湯冷めしにくいと言われています。
5 入浴前後にコップ1杯の水を飲む
入浴中は汗をかき、脱水になりやすく、血液がドロドロになり、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクが高まります。
入浴前後にコップ1杯の水を飲みましょう。
6 食事直後・飲酒時の入浴を控える
食事後や飲酒時は血圧が下がり、入浴することでさらに血圧が下がり過ぎてしまいます。食事後は1時間ほど、飲酒後は酔いが醒めるまで入浴を控えましょう。
7 ひとりでの入浴を控える
可能な場合は、家族による見守りや、公衆浴場、日帰り温泉等を活用しましょう。何か起きた場合でも早く対応ができます。
ただし、移動中の急激な温度変化には気をつけ、暖かい服装を心掛けましょう。
8 ゆっくりとお風呂から出る
お湯に浸かっているときは、体が温められ、血管が拡がり血圧が低下しています。その状態で急に立ち上がると、 脳まで血液を運ぶことが追い付かず、めまいや失神を起こすことがあります。
浴槽から出る時はゆっくり立ち上がる ことを心がけましょう。
この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。