19.いい歯の日
保健師便り2017.11.03 3919view
今月はいい歯の日にちなんで、「歯とお口」のおはなしです。
「ハチマルニイマル(8020)運動」という言葉を耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。20本以上の歯があれば、たいていのものは食べられるというところから『80歳になっても自分の歯を20本以上保つ』ことを目標としたものです。
現在の「8020達成率」はというと、開始時(1989年)は7%程度だった達成率が2016年の調査でいよいよ目標の50%を超えた(推計)ことがわかりました。「8020」はもはや夢の話ではなくなってきているのです!
すでに20本残っていない…という方は、大切なのは『しっかりと噛める』ことです。歯が20本以上、あるいは義歯でかみ合わせが調整できている高齢者は、そうでない高齢者に比べて、認知症の発症や介護が必要な割合が低いという研究結果も出ています。
近年、「オーラルフレイル」という新しい概念が誕生しました。直訳すると、『歯・口の機能の虚弱』という意味です。加齢に伴い、口腔の筋肉や活力が衰え、歯と口の機能が虚弱な状態をいいます。オーラルフレイルにより咀嚼(そしゃく)力が低下し、それが全身的な機能をも低下させることが示されています。
「○○○」には何が当てはまると思いますか?
―――――― 正解は、「歯周病」です。
子どもが歯を失う原因は「むし歯」が多いですが、大人が歯を失う原因第1位は、「歯周病」です。では一体、歯周病の正体とは何なのでしょう?
歯周病の正体は、細菌による『感染症』です。現在、病原菌として10種類の細菌が見つかっています。私たちの歯にこびりつく歯垢(プラーク)には、わずか1㎎中(塩:1㎎=10粒)に10億もの細菌がいると言われており、歯垢はいわば、細菌のかたまりです。さらに、歯垢は唾液中のミネラルと結合して硬くなり、たった2日間で「歯石」になると言われています。歯石はセルフケアでは取り除くことが困難な上、表面がでこぼこしているため細菌がつきやすく、また歯肉を刺激して歯周病を悪化させます。
歯周病の恐ろしいところは、初期の段階では本人にあまり自覚症状がないことです。自分が歯周病になっているにも関わらず、気づいていない人、自分が歯周病のどのレベルであるのかをわかっていない人は意外に多いようです。
歯周病により歯周ポケットが形成されると、そこから細菌そのものや細菌由来の病原因子、炎症で生じる物質が血液に流れ込み、全身の健康に影響を与えると考えられています。
歯周病は生活習慣病の1つとされます。歯周病を予防することがこれらを予防することにつながります。
では、お口の健康を守り健康寿命を延ばすためにはどうすればいいのでしょうか。歯周病の原因である細菌性プラークを取り除くこと、基本は『歯みがき』です。
歯みがきの一番の目的は、歯垢(プラーク)の除去です。みがく部位によって適切な方法があるため、一度歯科専門職から指導を受けられることをおすすめします。
- ① 磨きたい箇所に「毛先」を当てる
※特に歯と歯茎の「境目(歯周ポケット)」、歯と歯の「間」にみがき残しが多いため注意 - ② 毛先が広がらない程度の軽い力で動かす
- ③ 小刻み(5〜10mm)に動かし1〜2本ずつみがく
- ④ 磨き残しを防ぐため、磨く順序を決める
効率的にプラークを取り除くには、アイテムを有効に活用しましょう。
- ① 毛先の開いた歯ブラシは取り替える(目安:1ヶ月に1本)
- ② 歯磨き後にデンタルフロスや歯間ブラシ、デンタルリンスなどを併用する
(除去率が30%UPするといわれています)
多くの歯磨き剤には、フッ化物といって歯を酸から守ってくれる成分が含まれています。うがいは軽く一回にして、必要な成分を唾液中に長くとどまらせるとより効果的です。
- 歯みがき後のうがいは1回にする
※フッ素配合歯磨き剤は、プラークの除去だけでなく再石灰化により酸で溶けた成分を歯に戻して修復してくれます
歯垢はセルフケアである程度取り除くことができますが、歯石は歯ブラシで除去することはできません。 かかりつけ医を持ち、定期的にプロフェッショナルケアを受けられることをおすすめします。
- 3ヶ月〜1年に1回、定期的に歯科専門職による口腔チェックを受ける
この記事は、神奈川県川崎市高津区にある健診機関「京浜保健衛生協会」が執筆・監修しています。人間ドック/巡回健診/女性のための健診/がん検診など、健診でお悩みの際はお気軽にご相談ください。